『ぼくのお姉さん』
丘 修三さんという、養護学校で先生をされていた方が書いた児童書ですが、
児童書と言っても、優れた児童書は大人向けの名作に比肩する深みを持ち、
感動を与えてくれます。
この本に収められた6篇は、いずれも障碍(しょうがい)児が登場するお話です。
障碍児に対する差別やいじめの場面があるので、「胸が痛んで読めない」という人もいます。
私も数年前、同じように苦しくて読むのを中断。
しまい込んでいたのですが、本棚を整理しようとして、改めて読んだら印象が変わりました。
物語を見る焦点を少し引いて、全体を見ていくと、実はどれも温かい、
純粋な良心に救われるお話だったのです。
昭和の時代の、ごく平凡な人間関係の中で浮かび上がる、
人間の愚かさも醜さも受け止めながら、なお人の心の奥にある
良心の光が描かれていて、感動します。
軽くない知的障碍を持つ方は、変な見栄が無くて純粋なのかもしれません。
作中の障碍を持つ子たちに比べて、自分はなんて「愛」を出し惜しみしているんだろう、
と気づかされました。
誰に対しても、自分の持てる愛情を惜しみなく表現できたら、どんなにすてきでしょう!
少しづつ、そんなふうになって行きたいです。