江口girl の引力
千葉県立美術館で開催中の「江口寿史イラストレーション展 彼女〜世界の誰にも描けない君の絵を描いている〜」を観てきた。
この人の描く女の子から発せられている、見るものを引きつけて止まない力は、何なのだろうと思いながら。
多様なポーズの、高校生から20代半ばくらいまでの、清潔でオシャレなエロ可愛い女性たち。しっとりした肌の湿度と弾力が想像されるような、若い娘(こ)の生々しい雰囲気が伝わって来る。
「女の人のある時期の「無敵さ」をなんとか絵に定着したい」
と作者が語る文章を読んで得心がいった。
そう、自分にもあった「無敵な」時代を思い出すのだ。
白髪になったり、太ったり、シミや皺ができる事なんて、こっれっぽちも想像できなくて、30歳以降の女性を「オバサン」と呼んで蔑んでいた生意気な時代。
躊躇なく肌を露出したり水着にもなれた、何も怖くなかった時代・・・。
いつの間にか、そんな頃の自分を思い出しながら見ていた。
満開になる前の八分咲き、九分咲きの花。
散る姿なんて微塵も感じさせない、ただ満開に向かって力強く開いていく蕾のような生命力に溢れている。
江口寿史は、そんなパワフルな生命力で輝く、瑞々しい「女性」のエッセンスを凝縮して見せてくれる。
よほど若い娘が好きなスケベおじさんなのだろうと思っていたら、絵を描くモチベーションが少し違っていたのが面白い。
「可愛らしい女性を見ると、その人を手に入れたいというより、その人になりたいと思っちゃう」
「女に生まれなかった悔しさが、絵の原動力になっている」(江口寿史・談)
歌舞伎の女形(おやま)のように、美しい女そして美しい時期の女の雰囲気を抽出できるのは、彼が女性を性の対象として見る以前に、憧れ同化してしまいたい存在として見てきた両性の視点が有ったればこそ。
(漫画『ストップ‼︎ひばりくん!』の主人公ひばりくんは、彼の願望の投影だった⁈)
だからこそ、これほど見事に、雰囲気まで肉薄するような女性の絵を描けたのだ!
(ただの女好きでは描けない絵でした、ゴメンなさい江口さん)
彼の描く、アーモンド型の瞳と柔らかそうな唇の娘は、これからも男女問わず、見る人々を捉えて離さない引力を持って魅了するだろう。